

1903年、大阪で開催された第五回内国勧業博覧会で初めてメリーゴーランドが紹介され、来場者を驚かせた。このときのメリーゴーランドは、海外から持ち込まれたもので、木馬が回転する様子はまさに異国の魔法そのものだった。
常設された最古の記録としては、1918年に東京・浅草の「木馬館」に設置されたものが知られている。この木馬館は、浅草花やしきの前身ともいえる娯楽施設で、メリーゴーランドは庶民の娯楽として親しまれはじめた。しかし、当時のメリーゴーランドは人力や簡単な機械で動くものが主流で、現代のような華やかな装飾や電動の滑らかな動きとは異なっていた。
特に注目すべきが、昭和の時代に日本にやってきた「カルーセル・エルドラド」。このメリーゴーランドは、1907年に制作されたもので、アール・ヌーヴォー様式の装飾が施された芸術品とも呼べる逸品だ。ヨーロッパ各地のカーニバルを巡業し、アメリカのコニー・アイランドで長年稼働した後、1964年に廃棄の危機に瀕していた。それを救ったのが東京・としまえんで、1971年から稼働を開始し、2010年には日本機械学会の「機械遺産」に登録されるほどの価値が認められた。

このエルドラドの特徴は、上下運動を伴わないシンプルな構造と、3つのステージが異なる速度で回転する点にある。木馬の彫刻や金箔の装飾は、西洋の美意識を伝え、訪れる者をタイムスリップさせたかのような気分にさせた。残念ながら、としまえんは2020年に閉園したが、エルドラドは現在もその歴史的価値から保存が検討されている。
一方、地方遊園地にもメリーゴーランドは欠かせない存在だった。たとえば、函館公園の「こどものくに」にあるメリーゴーランドは、1954年の「北洋漁業再開記念北海道大博覧会」で初登場し、1956年に同園に移設された。このメリーゴーランドは、国内現役最古級とされ、木馬のデザインや構造が開園当初からほぼ変わっていない点で非常に貴重である。
東京ディズニーランドの「キャッスルカルーセル」や東京ディズニーシーの「キャラバンカルーセル」は、テーマパークならではの物語性と豪華な装飾で一線を画す。特にキャッスルカルーセルは、ディズニー映画『シンデレラ』をモチーフにしたデザインで、馬の種類がすべて異なるというこだわりが隠されている。一方、ひらかたパークの2階建てメリーゴーランドは、イタリア製で馬のしっぽに人工毛を使用し、疾走感を演出する工夫が施されている。この2階建て構造は日本では珍しく、1階で写真を撮り、2階で眺望を楽しむという二つの楽しみ方が推奨されるなど、遊び心に溢れている。

また、キャラクターやテーマを強調したメリーゴーランドも登場した。たとえば、富士急ハイランドの「リサとガスパールタウン」にある「エッフェル塔のカルーセル」は、フランスの絵本をテーマにした愛らしいデザインで、子供だけでなく大人にも人気だ。同様に、ジブリパークのメリーゴーランドは、スタジオジブリの世界観を反映した独特の雰囲気を持ち、訪れる者を物語の中へと誘う。


